さゆぽんの防犯対策インタビュー

第1回:足立区が取り組む防災・防犯対策

インタビュー参加者写真

右:近藤 やよい区長(足立区区長) 左:インタビュアー 古屋 早百合 東セ協

1回目の今回は、防犯カメラの設置、運用など、防犯・防災に対する積極的な取り組みが注目される、足立区の近藤やよい区長にお話を伺いました。

近藤 やよい区長(足立区区長)

〈出生地〉
東京都足立区
〈学歴〉
青山学院大学大学院経済学博士前期課程修了
〈職歴〉
警視庁女性警察官(昭和58年4月から平成元年1月)
税理士(平成8年8月から)
東京都議会議員(平成9年7月から19年3月)
足立区長就任(平成19年6月20日から、平成23年6月20日から2期目)
〈趣味〉
観音巡り、写経
〈座右の銘〉
「 継続は力なり」


「治安の悪い区」からの脱却を目指す足立区が取り組む〝割れ窓理論〟の
日本版「ビューティフル・ウィンドウズ運動」

インタビュアー 古屋 早百合 東セ協

さゆぽん 本日は、貴重なお時間をいただきありがとうございます。はじめに、昨今の足立区内での犯罪に関する状況を伺いたいのですが、平成19年に区長に就任された当時、警視庁の統計によれば、刑法犯の認知件数が東京23区で最も多い区でした。以後、様々な取り組みがあってワーストを返上されています。

近藤やよい区長 最初に、足立区が展開している「ビューティフル・ウィンドウズ運動」のことからお話をしたいと思います。私は、区が抱える社会構造的な問題が4つあると考えています。
(1)治安が悪い区という認知
(2)子どもの学力
(3)貧困の連鎖
(4)寿命が短い

これらの問題が解決されないと、どんなに他のことで成果を挙げたとしても評価されないと感じます。足立区にとってのアキレス腱とも言える課題です。私は毎年、新成人の若者たちとミーティングを行っているのですが、その席で必ず出てくる「治安が悪い区」に関しての話があります。
高校卒業後、区外の大学に進学した時、他の地域の学生に「足立区出身」と言うと、「足立区って、犯罪が多くて恐いところなんでしょう?女の子は夜になったら街を歩けないんだってね」と、冗談ではなく本気で言われ、自分たちの区が、こんなに低い評価をされているということに初めて気づいた、という話です。
「自分たちも頑張るから、区としてもそうしたイメージを払拭するために力を出して欲しい」新成人から、毎年必ず言われる言葉です。
住んでいる者にとって、足立区が他の区と比べて特別危険な街だという意識はほとんどないと思います。 しかし、一度ついた固定的なイメージというのは、なかなか払拭することができません。そのイメージが続くことによって、経済的な損失も大きいものがあります。ここをなんとかしなければならないと、区長になって強く感じました。
では、何をやっていくか。行政や民間、一区民として何ができるかというと、街をきれいにする。花や緑を植える。また、足立区は、自転車の盗難、とりわけ無施錠の自転車盗難がおよそ7割ありますので、少なくとも自転車を停めたら鍵はかける。行政としてまた一区民として、このような自分たちで出来ることを広域的に行う。これが「ビューティフル・ウィンドウズ運動」という1つのムーブメントなんです。ニューヨークで市長を務められたルドルフ・ジュリアーニ氏は、窓ガラスが割れる=小さな犯罪を、小さなうちに摘み取ることで、凶悪な犯罪も抑圧することができるというアメリカの犯罪学者ジョージ・ケリング氏の考えた理論、「ブロークン・ウィンドウズ理論(割れ窓理論)」によって、ニューヨークの治安を回復させました。足立区の「ビューティフル・ウィンドウズ運動」は、その日本版とでも言いましょうか。割れ窓をなくすというよりも、きれいな窓を増やそう!というポジティブな発想で、足立区はこの運動を展開しています。
平成21年12月には、運動をさらに推進すべく、警視庁生活安全部と「治安再生事業の推進に関する覚書」を締結。以降、警視庁と区内4警察、足立区が一丸となって「危険な街」の汚名返上に向けて取り組んでいます。取り組み始めた当初、「刑法犯認知件数ワースト1からの脱却」を目標に動き出したのですが、議会からは、「区長が盛んに〝ワースト1〟と言うのはいかがなものか?」などと批判も浴びました。私は、この状況が区にとってどれだけマイナス要因なのかということを、区民の方に理解していただきたかったんですね。そして、区民一人ひとりが「足立区を良くしていこう」と真剣に思わなければ、治安の悪い区というイメージは、決して変わらないということを訴えたかった。その思いから、批判を承知で、敢えて「ワースト1からの脱却」を掲げ、正面突破を図りました。活動を積み上げて、平成25年はワースト4にまで改善してきました。刑法犯認知件数のピークは平成13年でしたが、ピーク時から比べると、平成25年は半分以下にまで減ってきています。年間の認知件数が9,000件を下回ったのは、昭和47年以来41年ぶりなんです。これは非常に大きな成果だと思います。
また、例年11月に、区内で世論調査を行っていますが、ここ数年、明らかに区民の「体感治安」が良くなっているという結果が出ています。平成13年以降、お住まいの地域の治安は良いか、悪いかという質問に対しては、「悪い」と答える方の方がこれまでは多かったのですが、今回初めて「良い」と回答した方が47%になり、「悪い」と回答した37%を、約1割上回りました。それと歩調を合わせるかのように、区を誇りに思うという方も5割に近づいて来ました。これも「ビューティフル・ウィンドウズ運動」の大きな果実だと思っています。


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